フィリピンの婚姻証明書2

本邦で再婚が成立したが、フィリピンの婚姻証明書が取得できない場合、「配偶者」の在留資格が許可されるか? 許可されるべきと私は考えます。

 

2023/08/22

フィリピンの婚姻証明書を地方出入国在留管理局提出できなければ、婚姻の成熟性や安定継続性が否定され、「配偶者」の在留資格への変更が許可されないのは不当であるとここ3年間程主張し続けてきました。
日本のルール(法の適用関する通則法)に基づき、本邦で離婚、そして縁があり再婚したフィリピン人。市区町村が発行する婚姻届受理証明書により、婚姻関係が公証されます。
ところがそれを夫婦として認めず、不利益処分を繰り返していたのが出入国在留管理庁及び地方出入国在留管理局です。
 


 

2023/08/29

外国人が「配偶者」の在留資格を得て、日本で在留するためには、日本人、永住者、定住者、一部を除き就労活動系の在留資格を所持する者との婚姻関係が有効に成立し、そしてその婚姻が実体を伴う、最高裁の言葉を借りれば「両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む事を本質とする婚姻という特別な身分関係を有する者としての日本における活動」であることが必要です。
「婚姻関係が有効に成立」とは、私は一貫して、我が国で婚姻が有効に成立している事、つまり婚姻届の受理権者である市区町村長発行する婚姻届受理証明書を提出する事で立証できると主張し続けています。
私は何か間違った事を主張しているでしょうか?
 


 

2023/09/05

市区町村長が発行する婚姻届受理証明書が婚姻当時者の婚姻関係を確実に公証します。
婚姻当事者双方が外国人である場合、外国官憲の婚姻証明書も日本語訳文を添付すれば婚姻関係を証明する事ができますが、その婚姻が我が国においても夫婦として認められているのか別途検討が必要となります。
極端な例えですが、一夫多妻性の国もイスラム諸国には多いですが、第2婦人、第3婦人も何らかの中長期の在留資格で本邦に在留していると仮定して、第2、第3婦人との本国の結婚証明書の日本語訳文を添付して確定申告すれば3人分の配偶者控除が適用されるのでしょうか?
我が国には我が国の秩序と規律があり、ある国では法的に有効といえども我が国においても有効とは限りません。
大麻の所持などもそうですか、いくらある国においては合法的ものでも、ある国の国民が日本で大麻を所持していれば逮捕されます。
 


 

2023/09/12

各国には様々な法律があります、国により価値観も善悪の基準も異なります。 ある国において正しい事でも、ある国では悪になります。それらを調整するのが国際私法です。我が国においては「法の適用に関する通則法」に国際私法の主な規定があります。
婚姻、離婚に関しては次の通りです。

(婚姻の成立及び方式)
第二十四条 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
3 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。
(婚姻の効力)
第二十五条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
(離婚)
第二十七条 第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。
 


 

2023/09/12

各国には様々な法律があります、国により価値観も善悪の基準も異なります。 ある国において正しい事でも、ある国では悪になります。それらを調整するのが国際私法です。我が国においては「法の適用に関する通則法」に国際私法の主な規定があります。
婚姻、離婚に関しては次の通りです。

(婚姻の成立及び方式)
第二十四条 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
3 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。
(婚姻の効力)
第二十五条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
(離婚)
第二十七条 第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。
 


 

2023/09/19

「配偶者等」に係る在留資格該当性の意義は、「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性の意義を判示した最高裁平成14年10月17日判決によれば、
ⅰ 外国人と日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があること
かつ、
ⅱ 日本人との間に、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という特別な身分関係を有する者としての日本における活動であること(婚姻が実体を伴うものであること)です。
法の支配の原則が貫徹する我が国において、最高裁判例と異なる要件を独自に設定する行政見解はありえません。この点、令和2年10月12日付の出入国在留管理庁参事官による「法令適用事前確認手続回答通知書」(https://www.moj.go.jp/content/001330814.pdf)も、法律上の婚姻関係が成立していること及び当該婚姻が実体を伴うものであることを、「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性が肯定されるための要件としており、在留資格該当性の意義を判示した最高裁判決と同旨であります。
 


 

2023/09/21

その上でフィリピン国官憲が発行する婚姻証明書が提出されないことは、「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性の要件のうち、ⅰ「外国人と日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があること」に関わる事情ではなく、ⅱ「婚姻が実体を伴うものであること」に関わりうる事情の一つにすぎないとしています。
 
換言すれば、外国人と日本人配偶者との婚姻事実が記載された日本の戸籍謄本等が提出されれば、フィリピン国官憲が発行する婚姻証明書が提出されなくとも、ⅰ「外国人と日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があること」について疑義が生じることはないことが前提となっています。
このことは、令和2年10月12日付の出入国在留管理庁参事官による「法令適用事前確認手続回答通知書」が、「フィリピンの婚姻証明書が提出されないことに起因して、上記要件のうち後者について・・・」と述べ、フィリピンの婚姻証明書の不提出は、(法律上の婚姻関係が成立していることという前者ではなく、当該婚姻が実体を伴うものであること)という「後者について」関わりうる事情であると位置付けていることから明らかです。

 

2023/09/26

「法的に有効な」婚姻といえるか否かの場合における「法的」とは、当然ながら、日本法の上で(日本において)という意味です。即ち、婚姻の法的有効性は、日本法(日本の国際私法)に照らして判断されます。日本国の主権(法務大臣の権限)の行使としてなされる入管法上の処分に係る要件該当性の問題である以上、「日本において」有効か否かが基準となるのは当然のことです。
 
婚姻の成立は何度も繰り返しますが、婚姻届受理証明書の存在自体から極めて明らかです(日本法の上で有効でなければ、市長によって創設的婚姻届が受理されることはありえないからです。)
 
婚姻の成立、有効性に関する理論的正当性については、婚姻の有効性(本問題)の先決問題としての、申請人若しくは永住配偶者とその前配偶者との離婚の有効性から論じることになります。
 
この点につき、有権解釈を含め渉外戸籍事項を所管する前東京法務局民事行政部戸籍課の平田圭寿氏が、「戸籍事務初心者のためのフィリピン人を相手方とする創設的婚姻届の審査について」と題する論稿において、次のとおり、極めて明快に説明しています。

 

2023/09/28

「先決問題について」
 
日本における創設的婚姻の届出時に、当事者である外国人について前婚があり、その前婚の解消(離婚、婚姻無効等)がその外国人の本国において登録されていない場合、その離婚が有効に成立していることが当該創設的届出に係る婚姻成立の先決問題になります。すなわち、婚姻が有効に成立するためには、これに先立つ離婚が有効に成立しているかを確認することになります。この場合、日本法上その離婚が有効に成立しているときは、たとえ外国人本国において離婚を認めていなくても、再婚をする妨げとはならない(重婚とはならない)とされています(平成18年1月20日付け民一第128号民事局民事第一課長回答)。
例えば、日本人甲がフィリピン人Aと再婚する場合、婚姻記録証明書を取り寄せたところ、Aは日本人乙との婚姻記録があり、その解消の記録がされていない場合でも、乙の戸籍にAとの離婚の記載がされているときは、日本法上有効に離婚が成立していると認められることから、甲とAは有効に婚姻を成立させることができることになります。
したがって、フィリピンの法制によれば、国外において外国人配偶者との離婚が有効に成立し、外国人配偶者が再婚をする資格を取得したときは、当該フィリピン人当事者は、フィリピン法の下で再婚することができるとされていますが(フィリピン家族法第26条第2項)、この手続を行っていない場合であっても、日本においては婚姻が認められることになります。