フィリピンの婚姻証明書

本邦に在留するフィリピン人が、フィリピンの裁判所で本邦において成立した離婚の承認判決を得て、離婚の事実をフィリピン本国に登録しなければ、本邦において再婚できないのでしょうか?
これは結論から申し上げると簡単に再婚はできます。

 

2021/09/28

日本の協議離婚がフィリピンの裁判所において承認判決を得る事ができるか否かについては過去のブログにおいて詳しく述べてきました。しかしそもそも本邦に在留するフィリピン人が、フィリピンの裁判所で本邦において成立した離婚の承認判決を得て、離婚の事実をフィリピン本国に登録しなければ、本邦において再婚できないのでしょうか?
 これは結論から申し上げると簡単に再婚はできます。
 大雑把にわかりやすく一言で言うと「日本で離婚が成立しているのだから、日本で再婚できて当たり前でしょ?」という理屈が通るからです。
 これをもう少し専門的に述べると、婚姻の有効性(本問題)の先決問題としての離婚の有効性から論じることになります。
 この点につき、有権解釈を含め渉外戸籍事項を所管する前東京法務局民事行政部戸籍課の平田圭寿氏が、「戸籍事務初心者のためのフィリピン人を相手方とする創設的婚姻届の審査について」と題する論稿(戸籍897号33頁)において、下記のとおり、極めて明快に説明しています。
 

                              記

 

日本における創設的婚姻の届出時に、当事者である外国人について前婚があり、その前婚の解消(離婚、婚姻無効等)がその外国人の本国において登録されていない場合、その離婚が有効に成立していることが当該創設的届出に係る婚姻成立の先決問題になります。すなわち、婚姻が有効に成立するためには、これに先立つ離婚が有効に成立しているかを確認することになります。この場合、日本法上その離婚が有効に成立しているときは、たとえ外国人本国において離婚を認めていなくても、再婚をする妨げとはならない(重婚とはならない)とされています(平成18年1月20日付け民一第128号民事局民事第一課長回答)。

(中略)したがって、フィリピンの法制によれば、国外において外国人配偶者との離婚が有効に成立し、外国人配偶者が再婚をする資格を取得したときは、当該フィリピン人当事者は、フィリピン法の下で再婚することができるとされていますが(フィリピン家族法第26条第2項)、この手続を行っていない場合であっても、日本においては婚姻が認められることになります。
 
上記のとおり、平成18年1月20日付け民一第128号民事局民事第一課長回答が、「日本法上その離婚が有効に成立しているときは、たとえ外国人本国において離婚を認めていなくても、再婚をする妨げとはならない(重婚とはならない)」と解するのは、最高裁平成12年1月27日判決が、渉外的な法律関係において、ある問題(本問題)を解決するために不可欠の前提問題が国際私法上本問題とは別個の法律関係を構成している場合、その前提問題の準拠法は、法廷地である日本国の国際私法により定めるべきであるとし、法廷地法説を採ることを明確にしているからです。戸籍実務も、当該判例に従って処理されています。
 
 さてここからが本題になりますが、
①法廷地法説に基づき本邦においてフィリピン人の再婚が本邦において有効に成立したときには、フィリピン本国政府機関発行の婚姻証明書は取得できるのでしょうか?
 ②フィリピン本国政府機関発行の婚姻証明書が取得できない場合、再婚の有効性を出入国管理局は認めてくれるのでしょうか?

 

結論から申し上げると、
①フィリピン本国政府機関発行の婚姻証明書は取得できません。
②再婚の有効性を出入国管理局に認めさせることはできます。
 
何故フィリピン本国政府機関発行の婚姻証明書は取得できないときでも、再婚の有効性を出入国管理局に認めさせて、もうし少し正確に申し上げると、日本人(永住者)の配偶者としての在留資格該当性を出入国管理局に認めさせることができるのかを、第1において、フィリピン国の離婚・再婚の法令について、第2において、フィリピン国の司法解釈の推移について、第3において、フィリピン行政庁の行政解釈と運用について、第4において「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性について少しずつ説明していきます。
 


 

2021/09/30

   
第1 フィリピン国における離婚・再婚に関する法令について
 
フィリピン国民と日本人間の婚姻が有効に挙行されて、その後、日本人配偶者が日本において有効に離婚を成立させた場合においては、残されたフィリピン人配偶者も再婚することはフィリピン法に基づいて可能です(フィリピン家族法26条2項)。またその後フィリピン国外で成立した後婚に関しても、その国において有効な婚姻は、フィリピン国内においても有効とされます(同法同条1項)。
 

 
フィリピン家族法26条
フィリピン国外において挙行されたすべての婚姻は、挙行地国の法律に従っており、その国において有効であるときは、わが国においても有効とする。ただし、第35条第1号および第4号ないし第6号ならびに第36条ないし第38条により禁止された婚姻を除く
 
フィリピン国民と外国人間の婚姻が有効に挙行され、その後、外国人配偶者が外国において有効に離婚を得て、再婚できるようになったときは、フィリピン人配偶者も、フィリピン法により再婚できるものとする。
 

上記のフィリピン家族法26条の規定は、 Van Dorn vs.Romillo 最高裁判決 (G.R.No.L-68470 1985年10月8日 )で、「司法的正義を守るためには、フィリピン人配偶者が自国での不公平な取り扱いをされるべきではない」と宣言されたことが基礎となっています。2005年10月25日フィリピン最高裁判決 Republic vs.Orbecido  (G.R.No.154380。以下、「2005年10月25日判決」という。 ) では、フィリピン家族法26条2項の立法趣旨は、外国で離婚が成立したことにより、もはや相手方の国の法律の下ではその相手方である外国人配偶者はフィリピン人配偶者との婚姻関係が解消されているにもかかわらず、フィリピン人配偶者は外国人配偶者との婚姻関係を維持し続けるという不合理な状態を回避することであると宣言されています。
フィリピンでは1986年2月25日に市民の力により革命(以下「2月革命」という)が無血で成就した後、1987年に新憲法が設定されます。家族や婚姻を国家の基本に据えた新憲法の規定を受け、1987年7月6日の行政命令第209号によって、フィリピン家族法が設定、同年8月4日に施行されますが、施行前の7月17日に大統領令第227号により、26条が改定され現在の内容になります。法律施行から30年以上経過していますが内容に変更はありません。

 

2021/10/07

  
第2 フィリピン国の司法解釈の推移について
 
 フィリピン家族法26条2項の「フィリピン国民と外国人間の婚姻が有効に挙行され、その後、外国人配偶者が外国において有効に離婚を得て、再婚できるようになったときは、フィリピン人配偶者も、フィリピン法により再婚できるものとする。」との規定の中で、特に「外国人配偶者が有効に離婚を得て」の記載が限定解釈される傾向があります。フィリピンで最も権威ある法学者のひとりホセ・ノリエド博士は家族法の逐条解説(日本語訳文「フィリピン家族法」明石出版)において、「外国人配偶者が有効に離婚を得て」の解釈について「離婚判決を得たのが外国人配偶者であることに注意していただきたい。なぜなら、離婚判決を得たのがフィリピン人配偶者であったとしたら、民法15条により、離婚を禁止するフィリピン法の適用を受けて、その者は再婚できないからである」と述べられています。
 
戸籍誌の一つである戸籍時報(加除出版)で、749号(平成29年1月号)~756号(平成29年7月号)までの7か月間にわたり、大谷美紀子弁護士監修で外国人ローヤリングネットワークが編著した連載記事「フィリピンにおける外国離婚判決の承認及び婚姻無効・取消しについて」にも、日本の協議離婚がフィリピンの裁判所で承認されるかについて以下のように述べられており、ノリエド博士の見解と一致します。
 
750号53頁
日本における離婚が協議離婚による場合や、調停ないし訴訟手続がフィリピン人によって提起されたものである場合には、原則としてフィリピンでは承認されないことを知っておかなければならない。
 
752号17頁
日本の協議離婚は、外国離婚判決(foreign divorce decree)には該当しないことから、フィリピン家族法26条2項に基づく承認は認められないと考えられているようである。しかし、例外として、たとえば、フィリピン人配偶者が、外国人配偶者から子供を人質に取られて、協議離婚への署名を迫られたと言うような特別な事情があり、その立証に成功した場合には、フィリピン家族法26条2項の趣旨に鑑み、協議離婚が絶対に承認されないと言うわけではない。マニラ裁判所のJose Lorenzo R. DE LA ROSA判事によれば、同判事がこれまで扱ってきた日本の承認手続きでは、9割が協議離婚の承認を求めるものであり、そのうち協議離婚について承認したのは、ほんの数件に過ぎないということであった。
 もっとも、フィリピンには日本の協議離婚に該当する制度がないため、協議離婚の手続きや性質について理解をしていない裁判官も多く、知識の欠如ゆえに、協議離婚が承認されている例もあるようである。
 
754号2頁
「日本で協議離婚をしたフィリピン人配偶者は、原則として、フィリピンの裁判所でフィリピン家族法26条2項に基づく承認判決を得る事ができない。
 
以上のように、日本の協議離婚、調停による離婚、フィリピン人が原告となった裁判離婚は原則承認されないと述べられた上で、特別な事情が存在する場合や、裁判官の知識の欠如故に承認された例もあるなどと、承認されるのは例外であることが述べられています。
 
2005年10月25日判決では、フィリピン人同士がフィリピン国内において婚姻を挙行したあと、当事者の一方が外国籍に帰化し、外国官憲から離婚判決を得た場合、残されたフィリピン人も家族法26条の規定により再婚が認められるかが争われた事案でしたが、最高裁はフィリピン人同士の婚姻と雖も、その後当事者の一方が外国籍に帰化した場合にもフィリピン家族法26条が適用されると認めた上で次のように述べられ離婚承認判決の必要性を示唆されます。
 
「事実を主張する当事者はこれを証明する責任を負い、単なる主張は証拠ではないというのは確立した規則である。(中略)外国離婚判決が、フィリピンの裁判所によって承認され得る前に、そのことを申し立てる当事者は、離婚を事実として証明し、かつ、当該離婚がそれを認める外国法に適合していることを示さなければならない。我々の裁判所は外国法を公知の事実とすることができないため、かかる外国法もまた証明されなければならない。(中略)さもなければ、相手方(フィリピン人配偶者)が別の婚姻関係に入る資格を有すると宣言するのに十分な証拠があることにはならないであろう。(翻訳文を戸籍時報751号49頁から引用)」
 
2010年8月11日フィリピン最高裁判決(Corpuz vs.Daisylyn(G.R.No. 186571))では、「フィリピンの裁判所で離婚承認判決を得ないで、登録された外国の離婚の登録は無効であり、何ら法的効果が生じない」と述べられます。
 
2018年4月24日フィリピン最高裁判決(MANALO vs Republic(G.R.No.221029))は、最高裁判所の全ての裁判官による大法廷(EN BANC)で審理が行われ、膨大な数の過去の最高裁判例等を引用し、家族法26条2項の立法趣旨は、残されたフィリピン人配偶者だけが外国人配偶者との婚姻関係を維持し続けるという不合理な状態を回避することだと繰り返し確認し、「外国人配偶者が外国において有効に離婚を得て」という26条2項の文言の立法趣旨を顧みないで機械的に当てはめる事を非難します。そしてフィリピン人が原告になり外国において離婚訴訟が提訴され、フィリピン人配偶者が離婚判決を得た場合でも、家族法26条の要件は満たし再婚できることが宣言されます。
 
最近の離婚承認判決の動向みると、地方裁判所では上記2018年4月24日フィリピン最高裁判決を尊重し、「外国人配偶者が外国において有効に離婚を得て」という26条2項の文言を文字通りに捉えないで、外国人配偶者だけでなく、フィリピン人配偶者側も積極的に離婚に関与したともいえる日本の協議離婚に関しても承認を試みる判例が増えているように感じます。しかし国を代表する訟務長官を代理する多くの検察官が、フィリピン人配偶者が離婚を得たと考えられる承認判決に対して異議を唱え、裁判官に再考を求める動議書を提出するため、裁判の審理は長期化しています。再考を求める動議書によっても裁判官が承認判決を覆さない場合、国を代表する訟務長官を代理する検察官は、日本の高等裁判所にあたる控訴裁判所(Court of Appeals)に控訴し、提出された資料の信ぴょう性や翻訳の正確さなど手続き上の不備に関して無理難題を突き付け承認判決が確定することを阻止していると思われる事案と多く接しています。


 

2021/10/11

  
第3 フィリピン行政庁の行政解釈の推移と運用について
 
フィリピンの身分関係の登録に関する実務においては、外国官憲が発行する離婚証明書若しくは離婚判決文に英訳文を添えて市民登録所に提出することで、内容の審議は行われず受理されていました。後婚の多くはカトリック教会の司祭以外の婚姻挙行者(裁判官、市長、キリスト教他宗派の牧師等)により挙行され、後婚も市民登録所に登録され婚姻証明書が発行されていました。
 
外国に在留するフィリピン人が在留国において再婚する場合においては、本国フィリピンに外国での離婚の成立に関して登録をすることを特に必要とせず、在外フィリピン公館へ離婚の証明書を届出るのみで再婚に必要な婚姻要件具備証明書が発給されていました。その後挙行された後婚は挙行地国の法律に従っており、その国において有効であるときは、在外フィリピン公館は後婚の届出を受理して、フィリピン本国においても市民登録所にも登録され、婚姻証明書が発行されていました。
 
2005年10月25日判決にて、離婚承認判決の必要性が示唆されたことは、行政解釈にも大きな影響を与えることとなり、2007年9月24日にフィリピン市民登録総監から全国の市民登録官へ覚書(Memorandum Circular No.2007-008〔添付資料3〕)が発布され、外国の離婚の事実を市民登録所に登録するためには、フィリピンの裁判所で離婚承認判を得て判決文と確定証明書を添付しなければならないと告知されました。以後フィリピン国内において再婚する場合は、フィリピンの裁判所で外国の離婚判決の承認判決を得て、市民登録所に登録することが必要となりました。
 
しかし国外で再婚する自国民に対しては、各国の事情に合わせて在外フィリピン公館の判断に任されていたようです。
在日フィリピン公館に関しては、2009年3月31日より、本邦で再婚を希望する自国民に対して婚姻要件具備証明書の交付を一旦停止します。
その後同じ在日フィリピン公館でも、在東京フィリピン大使館と在大阪フィリピン総領事館で異なった運用が行われ混乱に拍車がかかります。
西日本を管轄する在大阪総領事館では、同年6月には、日本国内の公証役場で離婚の宣誓供述をすることによって、婚姻要件具備証明書の交付を再開しました。一方東日本を管轄する在東京フィリピン大使館は同年9月になってから、大使館内で離婚に関する宣誓供述することで婚姻要件具備証明書に代わる書類として、CNOと呼ばれる書類が交付するようになります。
CNOには「下記の者の婚姻に関し、フィリピン共和国大使館に提出された宣誓供述書及び提出書類により、婚姻に関する異議申し立てが無いことを証明する」と記されていました。意味深長な表現ではありますが、英文ではEmbassy interposes no objection to her/his marriageと記されていたので、本邦での自国民の再婚に対して、大使館としては異議を申し立てない事を宣言した証明書と言えます。CNOの写しを添付すれば、フィリピンの裁判所からの離婚承認判決文を得ていなくても、本邦で成立した後婚の報告も在東京フィリピン大使館では受理され、本国の市民登録所に登録されて婚姻証明書が交付されていました。
  


 

2021/10/12

  
第3 フィリピン行政庁の行政解釈の推移と運用について2
 
2011年10月28日には在東京フィリピン大使館より新たな発表があり、CNO の交付は突然廃止され、それに代わり証明書(Certificate)が、離婚承認判決文を提出できない離婚者に一回のみ発行されるようになりました。
この証明書には日本語でこのように記載されていました。「現在離婚状態であると宣誓したことを証明する。当人は、フィリピン国民と外国人とが有効に婚姻をし、その後外国人配偶者によりフィリピン国外において有効に離婚成立が得られ再婚できる法的資格を与えられた場合、フィリピン国法においてそのフィリピン人配偶者についても再婚できるとするフィリピン家族法26条2項(1987年7月17日公布の大統領令第227号により改正)の要件を満たすことを証明する。」
 
本邦在留の自国民の、本邦での再婚を一度のみは公的に認めるとした当時の在日フィリピン大使館の運用の法的根拠は不明ですが、CNOと同様にこの証明書の写しを添付すれば、フィリピンの裁判所からの離婚承認判決文を得ていなくても、本邦で成立した後婚の報告は在東京フィリピン大使館では受理され、本国に登録されて婚姻証明書が交付されていました。この証明書の発行は2012年10月頃まで続きますが、2012年12月1日からは再び在日フィリピン大使館の運用方針が変わり、本邦で再婚を在日フィリピン公館へ届出する際には、前婚を解消した離婚に関する本国の裁判所からの承認判決文の添付が必須となりました。
 
その後、2019年のある時期までは、後日においても本邦で成立した離婚に関して、困難ではありますがフィリピンの裁判所で承認判決を得ることに、後日においてでも成功すれば、本邦で先に成立している後婚を有効な婚姻として在日フィリピン公館では受理されて本国の市民登録所に登録されて、結婚証明書も交付されていました。
このような在日フィリピン公館の解釈と運用は、フィリピンの裁判所の離婚承認判決を得ていないとしても、再婚に必要な実質的な要件の欠如ではなく、手続き上の形式的要件に従っていないだけとの解釈が根底にあったものと推測されます。フィリピン家族法においては、婚姻の基本的要件(実質的要件)と形式的要件のいずれかが不存在の場合に関しては、同法第4条において無効と規定されていますが、形式的要件に従わない場合でも婚姻の効力に影響がない(43)と規定されているからです。26条1項の「フィリピン国外において挙行されたすべての婚姻は、挙行地国の法律に従っており、その国において有効であるときは、わが国においても有効とする。」との条文との整合性もあります。
 
しかし直近においては、離婚承認判決を得る前に本邦において先に成立した後婚に関して、後日離婚の承認判決をフィリピンの裁判所で得る事に成功しても、在日フィリピン公館では後婚の報告は受理されていません。
在東京フィリピン大使館においては2019年のある時期から後婚の報告が受理されなくなったようですが、家族法26条の立法趣旨が外国での離婚によって発生するフィリピン人の不合理な状態を回避することであるならば、本邦の法律に従っており、本邦において有効な婚姻は、在日フィリピン公館で受理されるべきであり、在日フィリピン公館の見解はフィリピンの法制度上の規定から乖離しており、最高裁判例から導かれるべき司法解釈とも齟齬しています。
従いフィリピン国を代表する訟務長官の主張を退けて、離婚承認判決を決着するまでには最低でも5~7年以上の年数を要すると予想されます。結審後も在日フィリピン公館の担当領事の見解いかんによっては婚姻報告の受付が困難なことも予想され、フィリピンの機関から発行される結婚証明書の提出は極めて困難であります。
 
 
  


 

2021/10/15

  
第4 「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性について
 
「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性の意義は、最高裁平成14年10月17日判決によれば、
ⅰ 外国人と日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があること
かつ、
ⅱ 日本人との間に、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という特別な身分関係を有する者としての日本における活動であること(婚姻が実体を伴うものであること)です。
 
これを前提に考えれば、「日本人の配偶者等」に係る入国・在留審査要領第12編第28節第1 2(1)の「「配偶者」とは、現に婚姻関係中の者をいい、相手方の配偶者が死亡した者又は離婚したものは含まれない。」という記載は、上記ⅰの要件(法律上の有効な婚姻関係の存在)に対応するものであり、「配偶者として在留が認められるためには、双方の国籍国において法的に夫婦関係にあり、配偶者として認められていることが必要であるとともに、我が国においても配偶者として扱われるような者であることが必要であることから、内縁の配偶者は認められない。」という記載(本件記載を含む箇所)は、上記ⅱの要件(婚姻が実体を伴うものであること)に対応するものであると理解されます。法の支配の原則が貫徹する我が国において、最高裁判例と異なる要件を独自に設定する行政見解はありえないからです。
 


 

2021/10/19

  
第4 「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性について2
 
この点、令和2年10月12日付け出入国在留管理庁参事官による「法令適用事前確認手続回答通知書」[添付資料4]においても、フィリピン国官憲が発行する婚姻証明書が提出されないことは、「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性の要件のうち、ⅰ「外国人と日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があること」に関わる事情ではなく、ⅱ「婚姻が実体を伴うものであること」に関わりうる事情の一つにすぎないとしています。換言すれば、外国人と日本人配偶者との婚姻事実が記載された日本の戸籍謄本等(本案件の場合は婚姻届受理証明書)が提出されれば、フィリピン国官憲が発行する婚姻証明書が提出されなくとも、ⅰ「外国人と日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があること」について疑義が生じることはないことが前提となっています。このことは、令和2年10月12日付け法令適用事前確認手続回答通知書が、「フィリピンの婚姻証明書が提出されないことに起因して、上記要件のうち後者につて・・・」と述べ、フィリピンの婚姻証明書の不提出は、(法律上の婚姻関係が成立していることという前者ではなく、当該婚姻が実体を伴うものであること)という「後者について」関わりうる事情であると位置付けていることから明らかです。
 ⅱ「婚姻が実体を伴うものであること」との要件については、フィリピンの機関から発行された結婚証明書が提出されないことのみを理由に否定されるものではありません。両性の永続的な精神的及び肉体的結合の有無は、その内容からして、まさに実体的判断に基づくものであるため、手続書類の不存在のみを理由に否定されるものではないことは自明です。フィリピン国官憲が発行する婚姻証明書という手続書類が提出されない(提出できない)ことについて、フィリピン国の法制度の運用に照らして合理的理由が存在し、その説明がなされているにもかかわらず、当該書類の不提出のみを理由に、婚姻が実体を伴うものであることを否定する事実認定は、論理則、経験則等に照らして明らかに不合理であり、違法な事実認定です。


 

2021/10/20

  
 
第5 まとめ
 
フィリピン国においては、婚姻は不可侵の社会制度として家族の基盤であり、国によって保護されるものと憲法に定められているため、申請人がフィリピンの機関から結婚の証明書を取得できるか否かもフィリピン国の主権の問題でもあり、特に在日フィリピン公館の今後の見解、離婚承認裁判における国を代表する訟務長官の意向次第であります。
 しかし外国人といえども、日本国の主権が及ぶ日本国内において婚姻手続を行う以上は、日本国の主権に基づいて定められた法令を遵守すべきであり、渉外離婚及び渉外婚姻の場合は、それを所管する日本国の法令たる法の適用に関する通則法を遵守すべきことになります。